制 　　作：1996年　イギリス　　　　上映時間： 142分
  監督･脚本：マイク・リー
  出 　　演：ブレンダ・ブレッソン、テモシー・スポール
　　　　　　 フィリス・ローガン、　クレア・ラシュブルック
　　　　　　 マリアンヌ・ジャン・バチスト
　そ の 他 ：カンヌ映画祭パルムドール大賞、主演女優賞(B･ブレッソン)
　　　　　　 国際批評家連盟賞、1997年キネマ旬報第１位

あらすじ

　ロンドン近郊のアパートに住むシンシア（B･ブレッソン）は娘のロクサンヌ
（クレア・ラシュブルック）と二人暮らし。娘は父親を知らず、母親に聞いて
も教えてくれない。そして、シンシアには16歳の時子供を産み、顔を見ずに養
子に出した秘密がある。シンシアの弟のモーリス（ティモシー・ストール）は
写真館を営み成功している。一方、検眼師として生計を立てているホーテンス
（マリアンヌ・ジャン・バチスト）は養母が死に、実母を探そうと決意する。
ソシアルワーカーの協力を得て、市役所を回り、実母がシンシアであることを
突き止めた。ある日、ホーテンスはシンシアに電話して、自分がシンシアの子
供であることを名乗り、会いたいと告げる。シンシアは戸惑いながら会うこと
にする。シンシアは子供は白人だと思っていたので、会った子は黒人であり、
ただ驚くばかりである。それを機会に二人は頻繁に会うようになった。ロクサ
ンヌの21歳の誕生日が近づき、モーリスとその妻モニカ(フィリス・ローガン)
はロクサンヌとシンシアを誕生祝に招待するが、シンシアはホーテンスを友人
と偽って招待者の中に入れた……

解説

　ロンドン近郊に住む２組の家庭の家族愛と絆の強さを描いたイギリス風ホー
ムドラマである。母親は抱えている秘密を隠し通すために嘘をつく。秘密と嘘
の間で揺れ動く心の葛藤と家族愛をイギリスの気鋭の監督マイク・リーが優れ
たヒューマンドラマにした。シンシアは、少女時代は家族の世話に追われ、16
歳でつらい思いで子供を産み、生まれたばかりの赤ん坊を養子に出され、そん
な幸せとはいえない暮らしをしてきた。しかし、突然現れた娘を名乗るホーテ
ンスノの凛とした生き方から自分も人間としての誇り、愛情を取り戻すのであ
る。シンシアとホーテンスが始めて出会うコーヒーショップのシーンは感動的
である。９分間の間、カメラは移動せず真正面から二人を捉え、ワンカットで
二人の優れた演技力で緊迫感を作りだしている。この映画を観ると映画は万国
共通の言語であることを実感する。秘密（痛み）を抱えて生きている人たちに
「痛みを分け合え。意地を張って憎みあうのか」（モーリス）のメッセージは
心に残る。
　マイク・リーは1948年イギリス生まれ。70年代には劇作家、演出家として名
をなすが、同時に映画界にも進出し、1993年『ネイキッド』でカンヌ映画祭監
督賞を受賞し、1996年に本映画でカンヌ映画祭パルムドール賞を得ている。