制　　作：1955年　アメリカ 　　 上映時間：106分
  監　　督：アルフレッド・ヒッチコック
　出　　演：ケーリー・グラント、グレース・ケリー、ブリジット・オーベール
　　　　　　シャルル・ヴァネル

あらすじ

　南フランスのリビエラ。夜、黒猫が屋根の上を歩き回ると次の日には、そ
の家で宝石が盗まれるという妙な宝石強盗事件が相次いで起きる。ニースの
高台にある別荘に住む往年の“怪盗キャット”ことジョン・ロビー（Ｃ・グ
ラント）のもとへ、警察が来て同行を求める。警察はロビーを犯人と疑って
いるようである。警察をうまくまいたロビーはかっての仲間ベルタニ（シャ
ルル・ヴァネル）の経営するレストランを訪れる。ベルタニとロビーはレジ
スタンの同志で、戦後、組んで宝石泥棒を働いたこともある。共に、今では
足を洗っているのだが、レストランの従業員はロビーが裏切ったと冷たい態
度である。ロビーを追って警察がくるが、店のソムリエのフッサールの娘ダ
ニエル（Ｂ・オーベール）の案内で、カンヌのビーチクラブに逃れる。ロビ
ーは自分の疑いを晴らすには自ら真犯人を捕まえるしかないと、早速、真犯
人探しを始める。先ず、保険会社の調査員ヒュースンと接触し、高価な宝石
を持っている顧客リストを受け取る。その中の一人、石油で財をなしたアメ
リカの大富豪スティーヴ夫人に近づく算段をする。翌日、ヒュースンはステ
ィーヴ夫人とその娘フランシー（Ｇ・ケリー）と夫人の滞在先のカールトン
・ホテルで食事をし、そこに通り合わせたロビーに夫人は目を留め、それが
縁でロビーとフランシーは親しくなった…

解説

　風光明媚な世界的観光地リビエラを舞台に、ヒッチコックがＣ・グラント、
Ｇ・ケリーと組んだサスペンス・コメディーである。宝石泥棒と疑われたグ
ラントが真犯人を捕まえて容疑を晴らそうと、偽者を追いかけるが、血生臭
い事件は起こらず、恐怖感も感じさせず、ヒッチコックの軽妙洒脱は演出で、
軽く楽しい映画となった。カメラのロバート・バークスはリビエラの美しさ
を画面に映し、この年のアカデミー撮影賞を獲得した。
　ケーリー・グラント（1904〜1986）は、一時、映画を離れていたが、ヒッチ
コックに口説かれてこの映画に出演し、この映画を機に第二の開花期を迎え、
『北北西に進路を取れ』（1959年）『シャレード』（1963年）に出演した。
　グレース・ケリー〈1929〜1982〉は、『ダイヤルＭを回せ』〈1954年〉
『裏窓』〈1954年〉と２回ヒッチコックの作品に出演し、この映画が３度目
の作品である。翌1956年4月、モナコ王国レーニエ大公と結婚し、映画界か
ら引退した。1982年9月14日、自動車事故で急死。53年のあまりにも短い、
だが華やかな人生を終えた。