制　　作：1991年　アメリカ 　　 上映時間：118分
  監　　督：ジョナサン･デミ
　原　　作：トーマス･ハリス
　脚　　本：テッド･タリー
　出　　演：ジョデイ･フォスター、アンソニー･ホプキンス、スコット･グレン
　そ の 他：1991年 アカデミー作品･監督･脚本･主演男優･主演女優賞受賞

あらすじ

　若い女性ばかりを狙い、殺した後に皮を剥ぐという異常な連続殺人事件が
発生した。ＦＢＩアカデミー訓練生クラリス（Ｊ・フォスター）は上司のジ
ャック（Ｓ・グレン）の指示で、州立精神病院に収監中の食人嗜好の天才精
神科医のハンニバル・レクター（Ａ・ホプキンス）に面会し、“バッファロ
ー・ビル”と呼ばれる犯人像を探ろうとする。レクターは患者９人を殺した
殺人犯である。彼に犯人の心理を解き明かしてもらうことと引き換えにクラ
リスは自分の生い立ちを話す。子供の頃、虐げられた子羊を救えなかったこ
とを話し、レクターから、それがトラウマになっていることを指摘される。
（これが『羊たちの沈黙』の題名の由来となっている。）レクターから事件
捜査の手がかりを少しづつ引き出したクラリスは、犯人に迫っていく。
　新たな犠牲者が生じた。国会議員の娘である。母親である国会議員は、レ
クターと会うことになり、レクターはワシントンに運ばれた。レクターは途
中、巧妙かつ残忍な手口で看守を殺害し、逃亡する……

解説

　公開当時“90年代最高のサイコスリラー”と評価された傑作である。ト
ーマス・ハリスのベストセラー小説の映画化で、監督はジョナサン・デミ。
女性を殺し、その後で皮を剥ぐという事件の犯人を追うＦＢＩのクラリス
は、上司の指示で殺人鬼である天才精神科医のレクターと接触し、情報を
得て犯人像を描こうとする。この二人の対決はデミの優れた演出で緊迫感
溢れる場面となった。映画は、クラリスの犯人を追う場面と、レクターと
の知的葛藤の場面と二つシーンが錯綜し展開する。Ｊ・デミは1944年生ま
れ。長くＢ級映画で腕を磨いていたが、この映画で花開き、ハリウッドの
一流監督の仲間入りを果たした。
　この映画は1991年のアカデミー作品、監督、脚本、主演男優、主演女優
を獲得し、主要５部門受賞した。こらまで、主要５部門を独占したのは
『ある夜の出来事』（1934年）『カッコーの巣の上で』（1975年）だけで
ある。
　Ｊ・フォスター(1962〜)は知的で、聡明な女性をひたむきに演じ、20代
で２度目のオスカー受賞となった。（初回は「告発の行方」1988）。Ａ・
ポプキンス（1937〜）はイギリスの名優で、これまでの役柄と大きくかけ
離れた演技であったが、狂気のなかに品格を包み込んだ演技により初めて
のオスカーを獲得した。