鑑賞映画解説201123

鑑賞映画の解説

眺めのいい部屋
A Room with a View
＜鑑賞日：2012・3・12＞

  制　　作：1986年　　イギリス　　　117分
  監　　督：ジェイムス・アイヴォリー
　原　　作：Ｅ・Ｇ・フォースター
　出　　演：ヘレナ・ボナム・カーター、マギー・スミス、ダニエル・デイ・ルイス
　　　　　　ジュリアン・サンズ、デンフォルム・エリオット、ジュディ・デンチ
　そ の 他：アカデミー賞脚色、衣装、美術の3部門で受賞

あらすじ

　1907年、イギリスの良家の令嬢ルーシー（Ｈ・Ｂ・カーター）は年上の従姉シャーロット（Ｍ・スミス）に付き添われ、イタリアのフィレンツェを訪れる。イギリス人観光客がよく訪れるペンションに着いた二人は、彼女たちの部屋がアルノ河に面した眺めのいい部屋でなく、中庭に面していたのでがっかりする。シャーロットが苦情を言うのを聞いたエマソン（Ｄ・エリオット）は彼と息子ジョージ(Ｊ・サンズ)の眺めのいい部屋と交換してあげようと申しでた。
しかし、何事も秩序を重んじるシャーロットは断るが、同宿していたルーシーの地元教区のビーブ牧師に説得され申し出を受ける。　翌朝、一人で街を見物していたルーシーは、シニョール広場で喧嘩で胸をさされた男が血だらけになって倒れる場面を目撃し、ショックで気を失う。ルーシーを救ったのは通り合わせたジョージであった。二人はお互いを意識する。ある日、近郊の渓谷へのピクニックに宿泊客は出かけるが、ルーシーとジョージは麦畑で二人きりになった時、激情にかられたジョージはキスをする。二人の仲に気付いたシャーロットは旅行を中止してイギリスに帰った。帰国して数カ月後、ルーシーは教養豊かなシシル・ヴァイス（Ｄ・Ｄ・ルイス）から求婚され、婚約する。そのシシルがロンドンで出会ったエマソン親子にルーシーの家に近い貸家の世話をしたことから、ルーシーとジョージは再会する・・・　

解説

　イギリスの作家Ｅ・Ｍ・フォースターの同名小説を監督のＪ・アイボリーが映画化した。フォースターには異なった価値観、宗教観を持つ者同士が触れ合うことで巻き起こす葛藤を描いた作品が多いが、この映画でも、20世紀初頭のイギリスの階級制度を皮肉りながら、新しい価値観のもとで成長していく若い恋人同士に祝福の手を差し伸べている。アイボリー監督も、イギリス中産階級の“因習と偽善”をシャーロットやシシルを通して描き、エマソン親子の“自由な思想”の人々との対比を通して、鋭い文明批判を加えている。
　この映画の魅力は、20世紀初頭のエドワード７世治下の「エドワーディアン」といわれるイギリス社会の描写である。まず、イギリスの田園生活の美しさである。この時代、｢カントリイライフ｣にあこがれて、都会の人々が田園生活を楽しむために多くの「カントリイハウス」が作られた。また、アイボリー監督は、衣装、調度品に細心の注意を払ってこの時代の優雅な風俗を再現した。