鑑賞映画解説201204

鑑賞映画の解説

ダイヤルＭを廻せ
Dial M for Murder
＜鑑賞日：2012・5・28＞

  制　　作：1954年　　アメリア　　　105分
  監　　督：アルフレッド・ヒッチコック
　原　　作：フレデリック・ノット
　出　　演：グレース・ケリー、レイ・ミランド、ロバート・カミングス
　　　　　　ジョン・ウイリアムス、アンソニー・トースン

あらすじ

　ロンドンの住宅地のアパートの１階に住むトニー（レイ・ミランド）とマーゴ（グレース・ケリー）のウエンディス夫妻は、見かけは仲の良い夫婦だが、二人の気持ちは離ればなれである。トニーはかって、ウインブルドンのチャンピオンで、金持ちの娘マーゴはトニーの名声にあこがれて結婚したのだが、トニーが選手を引退してからは彼への愛は冷めて、今は推理作家のマーク・ホリデイ（ロバート・カミングス）と不倫関係にある。それを恨むトニーは密かにマーゴを殺し、妻の遺産を手に入れることを考え、計画を練った。まず妻を殺してくれる男を探さねばならないが、大学の同窓生で全く付き合いのないレスゲートという借金まみれの男を見つけ出し、１０００ポンドで殺人を依頼した。
　計画ではトニーはマークと食事に行き、アリバイを作っておいて、その間、レスゲートを部屋に忍び込ませる。決めた時間にトニーはマーゴに電話をかけ、電話に出たとき、隠れていたレスゲートが後ろから首を絞めて殺すという手筈だった。しかし、実際には首を絞められたマーゴは必死でもがいて、手に触れたハサミでレスゲートを刺殺してしまった。電話の状況から事態の急変を知ったトニーは計画を変更し、マーゴが不倫を種にレスゲートにゆすられていたので、彼を殺したという印象を警察に与え、罪に陥れようとした・・・・　

解説

　原作者のフレデリック・ノットはケンブリッジのテニスの選手で、彼の書いたテレビドラマがヒットし、ブロードウェイでもロングランを記録した作品の映画化である。金持の妻の不倫を知った元テニスのチャンピオンが、妻を殺して遺産を受け取ろうと完全犯罪を企むが、計画が狂って未遂に終わる。事件直後、必死でアリバイ工作をする夫と、殺人の罪を被せられ苦悩する妻との息詰まるかけひきが、ヒッチコックの巧みなテクニックで緊迫したミステリードラマとした。特に幾つも張り巡らされた伏線の活かし方に感嘆する。後半の計画が失敗してからの1時間にわたるトニーと刑事（Ｊ・ウイリアムズ）との攻防は目を離す暇もなく、まさに「知的スリラー」の教科書である。
　マーゴ役のグレース・ケリー(1929～1982)はヒッチコック作品に初めて起用されたが、ヒッチコックに気に入られたケリーは、その後「裏窓」（1954）、「泥棒成金」(1955)とに出演している。レイ・ミランド（1905～1986）は代表作「失われた週末」（1945）でアカデミー主演男優賞受賞。