鑑賞映画解説2012108

鑑賞映画の解説

イングリッシュ・ペイシェント
The English Patient
＜鑑賞日：2012・8・27＞

  制　　作：1996年　アメリカ　　162分
  監　　督：アンソニー・ミンゲラ
　原　　作：マイケル・オンダーチェ「イギリス人の患者」
　出　　演：レイフ・ファインズ、クリスティン・スコット・トーマス
　　　　　　ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー、コリン・ファース
　そ の 他：第69回アカデミー賞　作品、監督、助演女優（Ｊ・ピノシュ）、編集、撮影、
　　　　　　音楽、衣装デザイン、音響賞受賞

あらすじ

1944年　イタリア。砂漠で飛行中、撃墜され、大火傷を負った身元不明の男が野戦病院に運ばれてくる。身元の分からない患者はイングリッシユ・ペイシェント（イギリス人患者）と呼ばれた。戦争で愛する人を相次いで失い、絶望の淵にいる看護婦のハナ（Ｊ・ビノシュ）は男を看護しようと戦線を離れ、爆撃で廃墟と化した修道院に患者を運び入れ、献身的な看護を続ける。
　男は断片的に甦る記憶をハナに語って聞かせる。男の名はアルマシー（Ｒ・ファインズ）といいハンガリーの伯爵の家柄に生まれた。冒険家で、英国地理学協会に加わり、アフリカのサハラ砂漠で地図作りに没頭していた。38年、協会のスポンサーとして夫ジェフリー（Ｃ・ファース）と共に参加していたキャサリン（Ｋ・Ｓ・トーマス）は、ジェフリーがカイロの英国情報部に戻った後も砂漠に居残った。アルマシーはたちまち彼女に心奪われる。猛烈な砂嵐で車に閉じ込められた二人は、一夜過ごし、心が通い合った。カイロに戻った二人は、アルマシーの部屋で結ばれる。人目をしのんで逢う二人に感づいたジェフリーは復讐を決意する・・・　

解説

　イギリスのブッカ―賞を受賞したマイケル・オンダーチェの「イギリス人の患者」の映画化。原作に魅了されたミンゲラ監督が3年の歳月をかけて作った。1944年、第二次大戦の末期。アフリカとヨーロッパ大陸を舞台に繰り広げられるロマンスを描く大叙事詩である。記憶を失い、ベッドに横たわるアルマシーが断片的に思い出す軸と、アルマシーを看護するハナとインド人のイギリス軍中尉キップとの現在の恋を交錯させながら映画は進行する。ミンゲラ監督は「劇的であること」を主眼に自らシナリオに手を染め、その巧みな劇作術は原作者をして「全く予期していなかった素晴らしい贈り物」と絶賛する出来栄えの映画となった。
　この映画には、二組の男女のロマンス、砂漠を巡る諜報戦、裏切られた男の復讐など様々な人間関係が交わり、一見難解に見える映画だが、そこで繰り広げられるアルマシーとキャサリンのロマンスは、往年のハリウッド映画を彷彿させ大メロドラマである。この映画のカメラワークが素晴らしい。冒頭の双葉機から俯瞰で見る北アフリカの砂漠は太陽の光にあてられ幻想的であり、なだらかな砂丘の曲線は官能的である。撮影賞を加えて、この映画はアカデミー賞を８部門で受賞している。