鑑賞映画の解説

冬の小鳥
Une vie toute neuve
＜鑑賞日：2013・2・25＞ 
  制　　　作：2009年　韓国・フランス　　92分
  監督・脚本：ウニー・ルコント
　出　　　演：キム・セロン、パク・ドヨン
あらすじ

　1975年、9歳の少女ジニ（キム・セロン）は、父親によそ行きの服を着せられ、旅行にいくつもりが、連れて行かれたのはソウル郊外のカソリックの児童養護施設だった。シスターに施設を案内されている間に、父親は、ジニを置きざりにして黙って帰ってしまう。事態を飲み込めないジニは、父親が迎えに来ると信じて食事に手をつけず、施設に溶け込めず反抗を繰り返す。孤独なジニに親切にしてくれたのは年上のスッキだった。二人は庭で傷ついた小鳥の世話を始める。スッキはアメリカへの憧れをジニに語り、一緒にアメリカに行こうと誘う。頑なジニの心は少しずつ開いていった。施設の子供たちはひとり、またひとりと里親にもらわれていく。スッキは恵まれた家庭にもらわれたいと一生懸命に英語を勉強し、見学に来るアメリカ人に英語で挨拶をする。
　しかし、父親が迎えに来ると信じているジニは、施設の里子の話を断り続けている。ジニは覚えていた自宅の住所を園長に伝え、父親との連絡を取ろうとするが、そこには父親が住んでいないと告げられる。その頃、スッキはアメリカ人の里親が決まり、ひとりアメリカに渡ってしまう……
解説

　この映画の主人公ジニと同じ境遇から、里子としてフランスに渡り、成人して映画監督となったルコント監督が自己の実体験を踏まえて作られた映画である。脚本を読んだ韓国のイ・チャンドン監督が「シンプルだが沢山の要素がつまっている」と評し、この映画のプロデュースを買って出る。2006年、韓国とフランス間で結ばれた｢映画共同製作協定｣の第1号作品として完成された。フランスの映画誌「カイエ・デュ・シネマ」で2000年代最高の映画の1本に選ばれている。
　映画は父親に捨てられた、少女の孤独な魂の旅を描く。楽しく食事をし、よそ行きの靴と服を買ってもらい、優しい言葉をかけてくれた父親が、自分を棄てて、突然いなくなったことはジニには理解できない。淋しさはやがて怒りに変わる。反抗と抵抗を繰り返す。そして、祈るような気持ちで父親を待ち続ける。そのいたいけな心が胸を打つ。ジニの心が和らぎ、ひとりパリに向かい空港に降り立ち里親に向かう姿は、子供ながら新しい運命に立ち向かう強い意志が感じられる。つらい体験を通して、自分の生きる道を見出したのであろう。 原題は『新しい人生』である。