鑑賞映画解説201303

鑑賞映画の解説

ピクニック
Picnic
＜鑑賞日：2013・5・13＞

  制　　　作：1956年　アメリカ　　113分
  監　　　督：ジョシュア・ローガン
　原　　　作：ウイリアム・インジ
　出　　　演：ウイリアム・ホールデン、キム・ノヴァク、スーザン・ストラスバーグ、
　　　　　　　ロザリンド・ラッセル、クリフ・ロバートソン

あらすじ

　カンサス州の小さな町。9月第1週は“労働の日”で町中でピクニックに出かける習慣がある。この日にハル（Ｗ・ホールデン）が無一文で、貨車にもぐりこんで町に来た。学生時代の友人のアランを頼って来たのである。アランに会う前に、運よくある家の庭仕事を手伝い、昼食にありつく。その隣家は女ばかりの家で、母のフロー、長女のマッジ（Ｋ・ノヴァク）、次女のミリー（Ｓ・ストラスバーグ）、同居のオールド・ミスの教師ローズマリー（Ｒ・ラッセル）が住んでいる。マッジは町一番の美人で、母親のフローは町の有力者の息子のアランと結婚させようとするが、マッジはそんな気持ちはない。
　町の年一度のピクニックが始まった。ハルはアランに誘われて参加する。フロー一家と合流するが、次女のミリーにつかまって、何曲もダンスを踊らされる。ピクニック恒例の女王コンテストがあり、マッジが女王となった。ダンスパーティーがクライマックスに達した時、ハルとマッジが寄り添うように踊り始めた。「ムーングロー」の曲とともに、体を寄せ合い二人は夢見心地である。ダンスがすんでも二人は離れられない。ハルはアランの車を無断で借りて、マッジとドライブする。深夜、マッジはハルに送られて家に戻るがミリーの協力で、母親に見つからずに済んだ。アランはハルがマッジとドライブしたのを知り、自動車を盗まれたと警察に訴え、ハルは追われる身となった……

解説

　「ピクニック」はブロードウエイで大ヒットし、1953年度のピューリッアー賞を受賞したウイリアム・インジの舞台劇を映画化した作品である。監督はこの舞台劇の演出を手掛けたジョシュア・ローガン。平和なアメリカ中西部の田舎町に飛び込んできた青年ハルと、町一番の美女マッジの恋愛を軸に、年に一度の“労働祭”に集う町の人のそれぞれの人生がちりばめられ、ほろ苦い人生の哀歓が綴られる。マッジとハルの恋愛のほかにオールドミスの教師ローズマリー（ロザリンド・ラッセル）と初老のやもめの商人との恋物語も加わって、町の人々の生活をふくらませる。様々な人生模様の断片を描いたローガンの演出の妙は見事である。マッジを演ずるキム・ノヴァク（1933～）はコロンビアがリタ・ヘイワーズの後継者として発掘した新人で当時22歳。見事なブラチナ・ブロンドの髪を持ち、新人ながら妖艶の雰囲気を持つノヴァクは、この後、『黄金の腕』(1955)、『愛情物語』(1956)、『夜の豹』(1956)、『めまい』(1958)で存在感を示した。