鑑賞映画解説2013141

鑑賞映画の解説

月の輝く夜に
MOONSTRUCK
＜鑑賞日：2013・10・28＞

  制　　　作：1987年　アメリカ　102分
  監　　　督：ノーマン・ジュイソン
　脚　　　本：ジョン・パトリック・シャンリー
　出　　　演：シェール、ニコラス・ケイジ、オリンピア・デュカキス
　　　　　　　ヴィンセント・ガーディニア、ジュリー・ボヴァッソ、ダニー・アイエロ
　そ　の　他：アカデミー主演女優賞（シェール）助演女優賞（Ｏ・デュカキス）
　　　　　　　脚本賞受賞。ベルリン国際映画祭銀熊賞

あらすじ

　7年前に夫を事故で失ったロレッタ（シェール）は葬儀会社で働いているが、37歳になったいまでも独身である。ある日、幼馴染のジョニー（Ｄ・アイエロ）から結婚を申し込まれ、ロレッタは受け入れる。家に戻って父のコスモ（Ｖ・ガーディニア）と母のローズ（Ｏ・デュカキス）に報告するが、二人は快く祝福してくれない。式は1カ月後で、ジョニーは危篤の母に報告するため故郷のシシリー島に飛び立った。その際、ジョニーから絶交中の弟のロニー（Ｎ・ケイジ）に結婚式に出席してもらいたいとの伝言を頼まれる。ロレッタがパン屋で働くロニーに会うと、ロニーは義手の片手を差し出し、兄が原因で事故でこうなったのだと叫んだ。同情したロレッタはロニーのアパートに行き食事を作ってやると、突然ロニーはロレッタに抱きつき、唇を重ねてきた。眠っていた恋の炎に火が付いたロレッタは抱かれるまま、ベットイン。翌朝、深く反省するロレッタに、ロニーは今夜オペラに付き合ってくれるなら諦めるとラストデートを申し込む。
　その日、美容院で髪を整え、美しくドレスアップしたロレッタは、フォーマルスーツに身を包んだロニーと「ラ・ボエーム」公演中のメトロポリタン歌劇場の噴水の前で落ち合った……

解説

　原題の「MOONSTRUCK」には「月光が狂気をもたらす」という伝承から転じて「心乱れる」という意味があるという。劇中、ロレッタの祖父は「月は女に恋の魔法をかける。月の光には魔力が潜んでいる」と語るが、映画に現れるお盆の様な満月は、ロレッタの心に魔力与え、さえない地味な葬儀屋の事務員から美しい女性へと変身する。この映画では、ロレッタを中心にして浮気に走る父親、人生を達観している母親、深夜の犬の散歩を楽しむ祖父とロレッタ一家の人間模様を監督のノーマン・ジュイソンは暖かく描いた。ロレッタとロニーのメトロポリタン歌劇場での初デートは異次元の世界に観客を誘い込む。シェール40歳、ニコラス・ケイジ23歳（ともに撮影時の実年齢）だが、二人のコンビは年齢差を感じさせない。
　この映画でシェール（1947年～）はアカデミー主演女優賞を受賞し、母親役のＯ・デュカキス（1931～）は助演女優賞を得ている。また、当時23歳のニコラス・ケイジはその後、1996年「マービング・ラスベガス」でアカデミ―主演男優賞を獲得し、現在ではハリウッドの中心スターとして活躍中である。　