鑑賞映画解説201401

鑑賞映画の解説

黄　　昏
On Golden Pond
＜鑑賞日：2014・4・14＞

  制　　　作：1981年　アメリカ　　110分
  監　　　督：マーク・ライデル
　原　　　作：アーネスト・トンプソン
　出　　　演：キャサリン・ヘプバーン、ヘンリー・フォンダ、ジェーン・フォンダ
　そ　の　他：アカデミー主演男優賞、主演女優賞、脚色賞受賞

あらすじ

　アメリカ、ニューイングランドの静かな湖畔の別荘に、引退した大学教授のノーマン（Ｈ・フォンダ）と妻のエセル（Ｋ・ヘップバーン）が夏を過ごすためにやって来た。もうすぐ80歳を迎えるノーマンは心臓が悪く、物忘れもひどくなっており、エセルは優しくノーマンを支えている。ある日、一人娘のチェルシー（Ｊ・フォンダ）から手紙が届く。チェルシーは離婚経験があるが、今は歯医者のビルと交際しており、ビルの連れ子のビリーと3人で来るというのである。チェルシーはノーマンとは心から接することが出来ず、話はかみ合わないことが多い。3人が来ても、話はうち解けず気まずい雰囲気である。翌日、チェルシーはビリーを両親に預けて、ビルとヨーロッパに旅立った。
　一人残されたビリーは次第にノーマンになついていき、二人はボートでウォルターと呼ばれる魚を探しに岩だらけの入江に釣りに出かけた。夕暮れになっても帰らない二人を探しに入江に出かけたエセルは、ボートが座礁して、岩にかじりついて助けを待っている二人を見つけて助け出す。チェルシーはブリュツセルでビルと結婚式をあげて帰って来た……

解説

　父親と娘との確執と和解を描いた劇作家アーネスト・トンプソンの同名の舞台劇の脚本を目にしたジェーン・フォンダが、1981年に自ら大金を投じて企画した映画が『黄昏』である。父親のヘンリー・フォンダの浮気を苦にして母親が自殺したのはジェーン12歳のときである。3カ月後、ヘンリーは再婚したので、ジェーンは父親に反発し、父親と不和となっていたのだが、長い時間を経て、老境に入った父親と親密になりたいと共演できる脚本を探している時に出逢ったのがこの脚本だった。
　老夫婦を演じるのはヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘップバーン。ハリウッドの誇る二大スターの軽妙な駆け引きや、ユーモア溢れる絶妙な演技は、人生のたそがれを美しく飾る。父親と娘との確執を溶かすのは娘のチェルシーの連れてきた婚約者の息子ビリーである。80歳のノーマンと13歳の少年の間に友情が生まれ、素直な人間的な感情はノーマンの魂を生き返らせ、娘との和解を導く。
　娘ジェーンの企画で父親ヘンリーは半世紀に及ぶ俳優人生のすべて燃焼し、オスカーに無縁だったヘンリーに初のアカデミー主演男優賞をもたらした。また、相手のキャサリン・ヘップバーンは史上初となる4度目の主演女優賞を獲た。撮影時、ヘンリー・フォンダ77歳、ヘップバーンは73歳であった。アカデミー賞受賞式には心臓病が悪化したためヘンリーは出席できず欠席したが、生涯唯一のアカデミー主演男優賞をジェーンから受け取り、5カ月後にこの世を去ったのである。