鑑賞映画の解説

マーガレット・サッチャー　鉄の女の涙
The Iron Lady
＜鑑賞日：2014・11・24＞ 
　制　　　作：2003年　英国　105分
　監　　　督：フィリダ・ロイド
　出　　　演：メリル・ストリーブ、ジム・ブロードベント
　そ　の　他：アカデミー主演女優賞：メリル・ストリーブ
あらすじ

　食料雑貨商の家に生まれたマーガレット(成人後はメリル・ストリーブ)は父は地元の名士であり、市長を務めたこともある政治家のため、早くから政治家を志している。初めての下院議員選挙では落選し、失望する彼女に事業家デニス・サッチャー（ジム・ブロードベント）は慰め、力付け、プロポーズする。政治家への野心を隠さないマーガレットをデニスは快く受けいれ、二人は結婚する。双子に恵まれ、幸せな家庭を築く一方、1959年、下院議員選挙に初当選し、1970年教育科学大臣を務め、政治家としての階段を昇り始める。1974年の選挙で、保守党は敗北し、1975年党首選挙が行われた。次期党首最有力のジョセフ議員が舌禍事件で立候補を断念し、代わりに立ったマーガレットが対立候補のエドワード・ヒースを破り保守党党首に就任した。1979年の選挙で保守党は大勝し、選挙後、英国史上初の女性首相となった。
　首相となってからのマーガレットは山積する課題と立ち向かい、夫や子供たちとの時間を犠牲にしてひとりで戦い続けた。1990年、人頭税を導入しようとして国民の反感を買い，欧州連合に対して懐疑的な考えを示す等で財界の支持も失い、その年の党首選挙では規定の票を得られなかったため、自ら辞職を決め、党首の座を降りた。
　現在のロンドン。夫デニスは今は亡く。認知症も進み、夫の死も認識していない。娘のキャロル（オリヴィア・コールマン）が時折、訪れるが、母親の不可解な行動に戸惑っている。マーガレットはデニスの遺品を整理しながら。「あなたは幸せだった？」とつぶやくのだった。
解説

　英国初の女性の首相となり、保守的でしかも強硬な政治方針から“鉄の女”と呼ばれたマーガレット・サッチャーがフォークランド紛争など重大な局面で果たした役割と、人間的な苦悩を描くドラマである。映画は、政界引退後、認知症を患うマーガレットの実生活と、政治家としての彼女の歩んできた道を重ねながらマーガレットの半生を浮き彫りにする。すでに亡くなっている夫デニスを、幻覚として登場させるので分かりにくいが、政治活動の陰に隠れた夫婦愛が強調されている。因みに、本映画は2011年に撮影されており、当時、マーガレットは存命中であった。しかし、2013年4月8日、脳卒中により死去した。享年87歳であった。
　マーガレットを演じたメリル・ストリーブ（1949～）はアカデミー主演女優賞を獲得した。彼女にとって『ソフィーの選択』（1982）に次ぐ2回目の受賞である。