鑑賞映画解説201419

鑑賞映画の解説

アーティスト
THE ARTIST
＜鑑賞日：2015・1・12＞

　制　　　作：2011年　フランス　モノクロ、サイレント映画　100分
　監　　　督：ミシェル・アザナヴィシウス
　出　　　演：ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ
　そ　の　他：第84回アカデミー賞　作品、監督、主演男優、作曲、衣装デザイン賞受賞

あらすじ

　1927年、ハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンテイン（Ｊ・デュジャルダン）は新人女優ベビー・ミラー（ベレニス・ベジョ)と出会う。ベビーはジョージ主演作のエキストラ役を獲得すると、「女優を目指すなら個性が必要だ」とジョージはベビーに「つけぼくろ」を付けてやる。ベビーは踊り子、メイドと多くの役をこなし、ついにヒロインに抜擢される。
　時代は変わり、サイレント映画に代わって音のでるトーキー映画が登場した。サイレント映画にこだわるジョージはトーキーを断り、自ら監督、主演する大作を製作したが、興業的に大失敗して苦境に立った。心配したベビーはジョージのもとを訪ねるが、心を閉ざしたジョージは彼女を追い返した。
　それから一年。ベビーは今や新進スターとして人気を集めているが、ジョージは仕事がなくなり、妻にも去られる。生活費にも窮したジョージは、運転手クリフトンを解雇し、栄光の時代に集めた想い出のコレクションをオークションで売り払わざるを得なくなる。鬱積した心を酒で紛らしていたジョージは、そんな自分に絶望して、自分の出演したフィルムに火を放つ。愛犬アギ―の活躍で燃え上がる家から救出されたジョージだったが……

解説

　2011年、フランスに異色の映画が登場した。サイレント映画でしかもモノクロ映画である。「21世紀のいまどき、白黒のサイレント映画？」と不思議がられながら、カンヌ国際映画祭で上映された「アーティスト」は多くの観客の心をとらえ、主役のジャン・デュジャルダンは「主演男優賞｝を獲得した。さらに、アカデミー賞では監督賞など10部門にノミネートされ、作品、監督、主演男優賞、作曲賞、衣装デザイン賞など5部門で受賞した。
　この映画の背景となった1927年～1930年は映画界にとって、サイレント映画からトーキー映画に代わる転換期であった。ハリウッドではダグラス・フェァバンクス、モーリス・シュバリエ、ジョン・ギルバードなどかってのスクリーンの王者たちは皆その基盤を危うくし、スクリーンから消えた俳優も多かった。この映画のジョージもその一人で、監督のアザナヴィシゥスの、銀幕から姿を消したかっての名優たちへのオマージュでもある。アザナヴィシゥスはこの映画を作るにあたり大量のサイレント映画を観て、サイレント映画を徹底的に研究した。そして、全盛期のサイレント映画の多くはメロドラマが多かったことに着目し、この映画をメロドラマとしたという。その結果、字幕の使用を最小限にとどめながら、極上のラブストーリーを作り上げた。