平成27年度鑑賞映画ミニ解説

掲載:2015.4.10(4~6月分解説)
追記:2015.7.16(7~9月分解説)
追記:2015.9.29(10~12月分解説)


4月13日(月)
冬のライオン    1968年  米  監督 A・ハーヴェイ 134分
               出演 ピーター・オトゥール、キャサリン・ヘップバーン


 J・ゴールドマンの舞台劇の映画化。12世紀、イギリスのヘンリー2世の王位継承問題における、王と王妃、3人の息子の複雑な人間の葛藤を重厚な演出で描いた。王妃となるキャサリン・ヘップバーンが3回目のアカデミー主演女優賞を得ている。

4月27日(月)
舟を編む  2013年  舟を編む製作委員会   監督 石井裕也  133分
          出演 松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木 華


  「玄武書房」に務める馬締光也は新しく刊行する辞書「大渡海」の編集に迎えられる。光也の辞書編纂の世界に没頭する姿を描いた。2013年の日本映画大賞、日刊スポーツ映画大賞を受賞した話題作である。

5月11日(月) 
翼よあれが巴里の灯だ 1957年 米 監督 ビリー・ワイルダー 135分
                     出演 ジエームズ・スチュワート


 大西洋横断無着陸飛行の初成功という快挙を成し遂げたリンドバークの自伝的回想録の映画化。悪天候、睡魔、機体の凍結など次々に襲う危機に遭遇しながら、強靭な意志で克服して無事巴里に到着する。名手ビリー・ワイルダーの傑作である。

5月25日(月)
駅 STATION  1981年  東宝  監督 降旗康男 132分
              出演 高倉健、いしだあゆみ、倍賞千恵子


 人と人とのめぐり合いを、駅に停車する列車にたとえ、オリンピックのピストル競技選手でもある刑事と、3人の女の宿命的別離を描いた作品。倉本聡が、『冬の華』に次いで、高倉健のために書き下ろしたものである。

6月8日(月)
悲しき口笛   1949年  松竹  監督 家城巳代治   83分
             出演 美空ひばり、菅井一郎、津島恵子、原保美


 美空ひばりの第1回主演作品。戦後の横浜を舞台に、戦地から引き揚げてきた兄が妹を探す。手掛かりは彼が出征前に作曲した『悲しき口笛』という歌だけ。これに密輸がからんでドラマは展開する。大ヒットした同名の主題歌を歌った美空ひばりは、天才少女として全国に名前を知らしめた。

6月8日(月)
モロッコ    1930年   米   監督 G・F・スタンバーグ   95分
           出演 ゲーリー・クーパー、マレーネ・デイートリヒ


 1930年代の2大スターであるゲーリー・クーパーとマレーネ・ディートリヒの組み合わせによるメロドラマ。公開当初、当時の若者の熱い感動を呼んだという。日本で公開された初の本格的トーキー映画で、日本語による最初のスーパーインポーズ作品である。

6月22日(月)
インドシナ     1992年  仏  監督 レジス・バルニエ  159分
              出演 カトリーヌ・ドヌーブ


 インドシナがフランス領時代だった時代、ゴム農園を経営するフランス人女性エリアーヌはベトナム人を養女として教育しベトナム皇族に嫁がせることを夢見ていたが、養女はエリアーヌの愛人であるフランス軍将校に恋をする。一人の女性の波乱に満ちた人生を描く大河ドラマ。

7月13日(月)
愛の調べ  1947年   米   118分
          監督 クラレンス・ブラウン  主演 キャサリン・ヘップバーン


 シューマン夫妻の伝記の劇化作品をもとに映画化した。シューマン作曲のピアの名曲がルーヴィンシュタインのピアノによって奏でられる。シューマン夫妻とブラームスの友情が美しく描かれている。

7月27日(月)
昼顔    1966年   仏   100分
        監督 ルイス・ブニュエル  主演 カトリーヌ・ドヌーブ


 貞淑な人妻でありながら、昼は娼婦宿に通う女の肉体と心の矛盾を、現実と幻想を交錯しながらシュールにブニュエルが描いた。発表当時、センセーショナルな反響を巻き起こしたジョセフ・ケッセルの小説の映画化である。ドヌーブの“女”を逸脱した官能美が圧巻。

7月27日(月)
上流社会    1956年       アメリカ   107分
  監督 チャールズ・ウオルターズ 主演 グレース・ケリー、ビング・クロスビー


 グレース・ケリーのハリウッド最後の主演作品で、ケリーの優美な美貌が忘れられない。

8月3日(月)
そして父になる  2013年 「そして父になる」制作委員会 120分
 監督 是枝裕和  主演 福山雅治、尾野真千子、リリー・フランキー、真木よう子


 6歳まで育てたわが子が、出産のとき、取り違えられ、他人だったと知った二組の夫婦がこのまま育てるか、本来の家に戻すべきか悩む姿を描きながら、家族の在り方を問う問題作。カンヌ映画祭特別審査員賞受賞作である。

8月24日(月)
最高の人生の見つけ方  2007年   米   97分
     監督 ロブ・ライナー  主演 ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン


余命6カ月を宣告された二人の男が、死ぬ前にやり残したことを実現するために二人で冒険に出るハートフル・ストーリーである。

8月24日(月)
モロッコ  1930年 米  95分
  監督 G・F・スタンバーグ  主演 ゲーリー・クーパー、マレーネ・デイトリッヒ


 公開当初、当時の若者の熱い感動を呼んだという名作。日本で公開された初の本格トーキー映画で、日本語による最初のスーパーインポーズ作品である。

9月14日(月)
キリマンジェロの雪   2013年   仏    108分
     監督 ロベール・ゲディギャン  主演 アリアンヌ・アスカリッド


 港町マルセイユに暮らす結婚30年目を迎えた夫婦。アフリカ・キリマンジェロへの記念旅行を前に強盗に押し入られる。犯人は夫の同僚の青年で、失職して弟二人を懸命に養っていた。人間性を信じ、善良なる魂を描く感動作。

9月28日(月)
サイコ    1960年   米   108分
   監督 アルフレッド・ヒッチコック 主演 アンソニー・パーキンス


 女が恋人のために、4万ドルを横領し、一人の青年が管理するさびれたモーテルに宿泊する。そこで悪夢のような事件が始まった……異常心裡をテーマにしたヒッチコックの恐怖スリラーである。

10月12日(月)12時10分
不毛地帯 1976年 芸苑社  181分
    監督 山本薩夫  主演 仲代達矢、八千草薫、田宮二郎、小澤栄太郎

 昭和30年代頃のFx(次期使用戦闘機)の選定をめぐる商社間の暗躍と、政治家の利権あさりを織り交ぜながら描いた山崎豊子の同名小説を、原作とする骨太の社会派ドラマ。

10月26日(月)12時10分
終電車 1981年 仏国  監督 フランソワ・トリュフォー 131分
                主演 カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドヴァルデュー

 ナチスドイツ占領下のパリを舞台に、演劇の灯を守る演劇人たちの活動を描いた。亡命者の夫を持つ美貌の妻マリオンと新人俳優ベルナールとの恋愛を詩情豊かに綴っている。

10月26日(月)
シェルブールの雨傘   1964年 仏国    91分
    監督 ジャック・ドウミ   主演 カトリーヌ・ドヌーヴ、マルク・ミッシエル

 結婚を誓い合った恋人同士だったが、男に徴兵令状がきて二人は別れざるをえなくなる。 シェルブールの美しい風景と甘美なメロデイが涙を誘う。19歳のドヌーヴが可憐で美しい。

11月9日(月)12時30分
ドライビング・ミス・デイジー 1989年 米国  99分
 監督 ブルース・ペレスフォード  主演 ジェシカ・タンディ、モーガン・フリーマン

 アカデミー賞最優秀作品、主演女優、脚色、メイキャップの4部門を受賞したヒューマン・ドラマ。頑固な未亡人とお抱え運転手の老黒人とのギクシャクしながらも次第に心を通わせていく26年間の友情の軌跡を淡々と描いている。主役のタンディは80歳でオスカーに輝いた。

11月23日(月)12時30分
緋牡丹博徒・お竜参上   1970年 東映    100分
    監督 加藤 泰  主演 藤純子、菅原文太、若山富三郎

 浅草の鉄砲久一家にワラジを脱いだお竜は、興業権を巡って鮫洲政一家と争うことになる。藤純子の静と動の美しさが見事にスクリーンに焼き付けられた。

12月14日(月)12時10分
アラバマ物語  1962年  米国  129分
   監督 ロバート・マリガン 主演 グレゴリー・ペック、メリー・バーダム

 1930年代、弁護士である父親が黒人の弁護を引き受けたことから事件が起きる。ハーバー・リーのピューリッツア賞受賞作『ものまね鳥を殺すには』の映画化。グレゴリー・ペックはアカデミー主演男優賞を獲得し、脚色賞、美術監督賞も受賞した。

12月7日(月)12時30分
007/ドクター・ノー    1962年 英国   110分
   監督 テレンス・ヤング  主演 ショーン・コネリー、ジヨセフ・ワイズマン

 007シリーズ第1作。フロリダから発射されたロケットの軌道が何者かの怪電波によって狂わされた。真相を探りにボンドはジャマイカに飛ぶ…… 1963年初公開時のタイトルは『 007は殺しの番号』

1月11日
キャバレー  1972年  アメリカ  125分
   監督 ボブ・フォッシー   出演 ライザ・ミネリ、マイケル・ヨーク

 ファシズムの暗雲漂う1930年代初頭のベルリン。暗い政治状況に背を向け、キヤバレーに集う人たち。フォッシーは異色のデカダン・ミユージカル映画を作った。ライザ・ミネリのアカデミー主演女優賞をはじめ8部門でオスカーに輝いた。 

1月25日
グリーンマイル   1999年   アメリカ    188分
   監督 フランク・ダラボン  出演 トム・ハンクス、デヴィッド・モース

 「ショーシャンクの空に」のF・ダラボンが5年後再びS・キング原作に挑んだ。死刑囚ばかりを収容する刑務所の死刑囚とそれを見守る看守たちとの心温まるヒューマンドラマである。

2月8日
太秦ライムライト     2014年   日本   104分
   監督 落合 賢    出演 福本清三、松方弘樹

 京都太秦の撮影所を舞台に、『斬られ役』一筋に芸を磨いたベテラン俳優を主役に、滅びゆく時代劇映画に対するオマージュに満ちた映画である。

2月8日
エデンの東   1955年   アメリカ    115分
   監督 エリア・カザン  出演 ジェームス・デイーン、ジュリー・ハリス

 エリア・カザンは、スタインベックの名作『エデンの東』から、第4章『父と子』の物語に焦点を当て、親子、兄弟間の愛と相克を不変のテーマとして家族の映画を作った。弟のキャルに抜擢されたジェームス・デイーンは、父親に対する反抗と哀願、挑戦と挫折という揺れ動く若者を好演し、一躍スターに躍り出た。しかし、撮影終了後、自動車事故で24歳の若さでこの世を去り、その死は今なお惜しまれている。

2月22日
素晴らしき哉、人生!   1946年   アメリカ   130分
   監督 フランク・キャプラ  出演 ジェームズ・スチュワ-ト、ドナ・リード

 第二次大戦後、復員したフランク・キャプラの戦後第1作である。戦前のキャプラ映画では、理想主義に燃える善意の人たちを主人公にしていたが、この映画でも勤労者が自分の家を持てるように誠意を持って努力する青年社長を通して、戦後アメリカ社会の理想を描いている。感動的なヒューマンドラマである。

3月14日
サンセット大通り   1950年   アメリカ   110分
  監督 ビリー・ワイルダー  出演 グロリア・スワンソン、ウイリアム・ホールデン

 C・ブラケットとB・ワイルダーのコンビが描いた映画の都”ハリウッドの“内幕もの。大スターの豪華な邸宅が立ち並ぶハリウッドの”サンセット大通り”を舞台に、過去の大女優と売れない脚本家は再起をはかるが……ラストの大女優を演ずるグロリア・スワンソンの鬼気迫る演技が見もの。

3月28日
ツィゴイネルワイゼン  1980年  日本  145分
    監督 鈴木清順  出演 原田芳雄、大楠道代、藤田敏ハ、大谷直子

 内田百間原作の「サラサーテの盤」と多くの短篇のアイデアをもとに、時間と空間、 現実と幻想の間を映像は自在に動き、不思議な世界を醸し出す異色作。主役の4人はそれぞれ個性的な魅力を見せ、清順魔術を生かしている。妖気漂う映画だが、2時間余の長さを感じさせない映画となっている。