鑑賞映画の解説

翼よ！あれが巴里の灯だ
The Spirit of St.Louis
＜鑑賞日：2015・5・11＞ 
  制　　　作：1957年　アメリカ　　138分
  監　　　督：ビリー・ワイルダー
　原　　　作：チヤールズ・Ａ・リンドバーグ
　出　　　演：ジエームズ・スチユワート、バーレット・ロビンソン、アーサー・スペース
あらすじ

　1926年。ロング・アイランドのガーデン・シテイホテル。リンドバーグ（Ｊ・スチュワート）はこのホテルに泊って雨の止むのを待っている、眠れないまま、いろいろな思い出が交錯する。ニューヨーク～パリ間の無着陸飛行の最初の成功者には25,000ドルの賞金が与えられることになった。セントルイス―シカゴ間の郵便飛行士の若きリンドバーグはそれを目指し、町の有力者を訪ねて資金の寄付を仰ぐ。銀行の頭取などの援助を得て、資金は整い、飛行機は町の郷土の名前をとって“セントルイス魂号”と名付けられた。飛行機の製造はカリフォルニア州サンディエゴのライアン航空に依頼する。ライアン航空の協力で、短期間に飛行機は完成し、リンドバーグは直ちにセントルイスに戻った。折も折、パリを発ったフランスのナンジエッセとコリーが遭難の知らせが入る。後援者たちはリンドバーグの身を案じて計画の中止を申し出るが、決意の固いリンドバーグは出発地のニューヨークに向かった。
　５月２０日、午前７時５２分、雨で荒れた飛行場から多くの見送り人の声援に送られて，3600マイル彼方のパリを目指して飛び立った。“セントルイス魂”号は順調に飛ぶ。だが、一睡もできなかったリンドバーグは時折強い睡魔に襲われる。それを防ごうと幼い日の想い出を頭に描く。最初の単独飛行のこと、空中サーカスで曲芸師をしていたことなどが走馬灯にように思い出す。飛行機はアメリカ大陸を離れて、大西洋上にかかった。窓外をみるといつの間にか雪となっている。翼に付いた雪が凍り、機体が重くなり、高度が下がってきた。大迂回して翼の氷を落としたが、リンドバーグは疲れ果てていつの間にか眠りに入り操縦桿を放した……
解説

　リンドバーグの自伝回想録をビリー・ワイルダーが監督した。3600マイルの長距離の一人旅の映画化は困難が多い。脚本家出身のワイルダーは脚本作りにも参加して、工夫をこらし魅せる映画作りに成功した。特に離陸してからのワィルダーの演出は見事である。狭い操縦室だから動きも少ない。話し相手もいない。回想シーンだけではもたない。才人ワイルダーはまず、蠅を登場させ る。飛行場から紛れ込んで来た蠅である。リンドバーグは蠅と話をする。蠅が地図の上を動くと説明役ともなる。それと飛行場で女性からもらった小さな鏡。伏線としてどう使うかと思っていたら、危機を救う小道具となる。この映画が訴えているアメリカのフロンティア・スピリットはすがすがしい。