鑑賞映画解説201507

鑑賞映画の解説

愛の調べ
Song of Love
＜鑑賞日：2015・7・13＞

  制　　　作：1947年　米国　　119分
  監　　　督：クラレンス・ブラウン
　出　　　演：キャサリン・ヘップバーン、ポール・ヘンリード、ロバート・ウオーカー

あらすじ

　天才的ピアニストの折り紙つきのクララ・ヴィーク（Ｋ・ヘップバーン）は父ヴィーク教授の弟子、ロベルト・シューマンと恋仲だったが、教授はシューマンとの結婚を許さない。幸い、二人を知るリストの証言で二人の結婚は法廷で許され、ライプチヒの屋根裏で新生活が始まった。それから10年、シューマン夫婦には7人の子供ができ、女中のベルタの手だけでは足りないくらいだった。大晦日の夜、20歳のヨハンネス・ブラームスがシューマンの弟子にしてくれと頼みに来て、そのまま同居することになった。彼は一目みたときからクララに惚れてしまったのだが、生来子供好きで、子供の面倒を見ながら、クララの傍で、作曲の勉強の出来るのを、若いブラームスは楽しみにしていた。ところが、シューマンは作曲、批評、教授と忙しい生活を送っていたが、彼の音楽が認められないので神経衰弱に陥っていた。生活費を得るためにマネージャーの勧めでクララはケルンでピアノ独奏会に出演して大成功だった。しかし、自分よりクララが才能を認められるのかとシューマンが悩んでいるのを知ってクララは演奏旅行を断った。
　シューマンはオペラ「ファウスト］の作曲に命をかけていた。クララは楽譜を音楽出版業者に送ったが断られた。見かねたブラームスはリストに助力を依頼した。リストの骨折りで「ファウスト」はライプチヒのゲヴァントハウスでシューマン指揮で行われたが、途中、シューマンは指揮棒を落とし両手で眼を押さえた。神経症が高進していたのである。彼はサナトリゥウムに入れられ、 2年の闘病も空しく世を去った………

解説

　クララ・シューマンと夫ロベルト・シューマンとの出会い、結婚生活と二人の愛の軌跡を描いた伝記映画。音楽史に名を残す著名な音楽家だけに、全編クラシック音楽が映画を飾り、優れた音楽映画になった。クララを演ずるヘップバーンの弾くピアノの音色は、20世紀を代表するピアニスト、アルトゥール・ルーヴィンシュタインの演奏によるものだけに、そのピアノ演奏を聴くだけでもこの映画の価値がある。
　シューマン夫妻の歴史を参考として脚色した映画だが、監督のクラレンス・ブラウンは要所、要所を的確に押さえて愛の形の映像化に成功した。そして、シューマン夫妻とブラームスとの家族ぐるみの友情も美しく描かれ、音楽史のひとこまを捉えている。因みにロベルトは1810年～1856年、クララは1819～1896、ブラームスは1833～1897の生涯で、ブラームスはクララの後を追うように1年後に亡くなっている。