鑑賞映画の解説

サイコ
Psycho
＜鑑賞日：2015・9・28＞ 
  制　　　作：1960年　アメリカ　　109分
  監　　　督：アルフレッド・ヒッチコック
　原　　　作：ロバート・ブロック
　出　　　演：アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ヴェラ・マイルズ
あらすじ

　アリゾナ州の小さな町、ファーベルの不動産会社に勤めるマリオン（ジャネット・リー）は隣町で雑貨屋を開いているサム（ジョン・ギャビン）と婚約しているが、サムが別れた妻に多額の慰謝料を払っているため結婚できないでいる。土曜日の午後、銀行に会社の金4万ドルを預けに行ったマリオンは、この金があればサムと結婚できると考え、金を持って隣町に車で逃げる。夜になり、雨が降ってきたので、郊外の旧街道にあるモーテルに宿をとった。宿の経営者のノーマン(アンソニー・パーキンス)は隣の古めかしい邸宅で母親と住んでいる。
　マリオンがシャワーを浴びていると女装した何者かに襲われ、刃物で何度も刺され、マリオンは死んだ。直後に浴室に飛び込んだノーマンは浴室を清掃し、マリオンの死体と4万ドルを乗せたまま、マリオンの車をモーテルの裏の沼に沈めた。
　月曜日に4万ドルが銀行に入金されていないことを知った会社は、私立探偵のアーボガストにマリオンの足取りを洗わせた。アーボガストは隣町のサムの店に行ったが、そこにはマリオンの妹のライラが姉の消息を訪ねて来ており、マリオンはサムの家に来ていないことを知った。アーボガストはファーベルとサムの家の中間にモーテルのあることを知り、それを調べに出かけた。そこでマリオンがモーテルに寄ったことを知った。これから、ノーマンの母親と会うというアーボガストからの電話がサムに入った後で、アーボガストの消息は絶えた。サムとライラは町の保安官のチエンバースを訪ねる。そこで、ノーマンの母親は10年前に死んでいるとことを聞かされた……
解説

　1950年代のＡ・ヒッチコックは『裏窓』(53年)『知りすぎていた男』(56年)などユーモアを交えて娯楽性の強い作品を数多く発表していたが、1960年、ヒッチコックは、これまでの作品とはガラリと趣を変えて「テーマや演技なんかどうでもいい。観客を恐怖に引きずり込むために、映像技術を駆使することこそ歓びなのだ。私は『サイコ』でその歓びを達成した。」と言って映画史上に残る“恐怖（ホラー）”映画の傑作『サイコ』を製作した。
　この映画では血まみれの死体や、凶器の刃物が死体を切り刻む残忍な描写はない。モノクロ映画の特性を生かして、クローズアップの効果的な使用など映像の魔術により、恐怖感をより一層高めている。バーナード・ハーマンによる音楽や効果音がさらなる緊迫感を観客に与える。公開時、映画館の前に「この映画を観た方は、決してラストを人に話さないでください」と書いた大看板を立て、客の心理をあおったのである。