鑑賞映画解説201518

鑑賞映画の解説

アラバマ物語
Ｔo Kill ａ Mockingbird
＜鑑賞日：2015・12・14＞

  制　　　作：1962年　アメリカ　モノクロ　129分
  監　　　督：ロバート・マリガン
　原　　　作：ハーバー・リー（ピューリッツアー賞受賞）
　出　　　演：グレゴリー・ペック、メアリー・バダム、フィリップ・アルフォード
　受　　　賞：アカデミー主演男優、脚色、美術(白黒部門)賞

あらすじ

　1930年代、アラバマ州の田舎町メイカムに、お転婆娘のスカウトと兄のジエムと父親の弁護士アティカス（グレゴリー・ペック)が住んでいた。子供たちの母親はすでに亡くなっており、家族は家事全般をきりもりする黒人の家政婦との4人だった．事件といえば、子供たちが、近所の変わり者“ブー”の様子を探ることぐらいで日々は平穏に流れていた。ある日、アティカスに地元の判事が、白人女性メイエラ・ユーエルに対する婦女暴行事件で訴えのあった黒人容疑者トム・ロビンソンの弁護の依頼をする。人種差別の強い南部の町で黒人の弁護を引き受けたアティカスに町の人々の反発は強く、アティカスが弁護を引き受けてことで、スカウトは学校で喧嘩をするようになる。
　裁判の日がきた。陪審員は総て白人という異常の状況の中で、アティカスは滔々と弁護を始めた。トムがメイエラの家に行ったのは事実だが、それは彼女が力仕事の手伝いを頼んだからである。また、メイエラに殴られた跡があるが、裁判で、トムの左腕が不自由であることを明かしたうえで、犯人は左腕を使って暴行を加えた痕があるとし、メイエラの父親のボブに自分の名前を書かせ、左利きであることを示して、殴ったのはトムでなく、ボブであることをほのめかした。しかし、判決は有罪となった。アティカスが家に帰ると保安官からトムが護送中に逃げ出したため、撃たれて死んだとの報告を受けた……

解説

　1960年に発表されたハーバー・リーの自伝的小説『アラバマ物語』は同年のピューリッツアー賞を受賞し、全米で900万部を売上げる大ベストセラーになった。人種差別の著しいアメリカ南部で白人女性への暴行容疑で逮捕された黒人青年の事件を担当する弁護士の物語だが、声高に黒人差別を訴えるのでなく少女の目から見た差別社会の状況を描いたところに、この映画の優れた特色がある。
　映画も原作も原題名は『To Kill a Mockingbird』 (ものまね鳥を撃つ)。『ものまね鳥』は中南米の産。巣を守る習性があり、それはこの映画のブーを思わせる。ものまね鳥は殺してはいけない鳥とされており、保安官はブーを守るためボブを事故死とした。スカウトは父親に「ものまね鳥を撃つのと同じことでしょう。」と言うのは、保安官の意図を理解したからである。この映画の重要なメッセージである。
　勇気をもって正義を貫いたアティカス弁護士を演じたグレゴリー・ペックは1962年度のアカデミー主演男優賞を獲得している。